講師の視点で(?)レビュー!結城浩著『数学ガール/フェルマーの最終定理』はオススメの数学本!!
はじめに
この名前を聞くとちょっとドキドキするのはなぜでしょう?
「最終定理」という響きがなんとも特別な感じですよね。
中学2年生のとき、この定理を知って衝撃を受けたのを覚えています。
フェルマーの最終定理とは、
という定理のことである。フェルマーの大定理とも呼ばれる。
フェルマーが驚くべき証明を得たと書き残したと伝えられ、長らく証明も反証もなされなかったことからフェルマー予想とも称されたが、360年後にアンドリュー・ワイルズによって完全に証明され、ワイルズの定理あるいはフェルマー・ワイルズの定理とも呼ばれるようになった。
というものです。
←ピエール・ド・フェルマー
17世紀フランスの数学者フェルマーが書き残してから、ワイルズが1995年に証明するまで数々の数学者を苦しめた難問でした。
問題の内容自体は中学生レベル。
しかもフェルマーの「真に驚くべき証明法を見つけたが、この余白はそれを書くのには狭すぎる」という意味ありげなメモ。
これで有名にならないわけがありません。
さて、今回はそんなフェルマーの最終定理について書かれた、結城浩著の『数学ガール/フェルマーの最終定理』を読んでみたレビューです。
どんな内容なの?
例のごとく数学が大好きな「僕」とクールで知的な同級生・ミルカさん、元気いっぱいの小動物系の後輩・テトラちゃんが、さまざまな数学の問題を考えながら対話を展開していく小説です。
この巻からは「僕」の従妹で近くに住んでいるという理想の妹キャラ(しかもネコ語を使う!)、中学生のユーリが加わってより賑やかになりました。
ミルカさん、テトラちゃん、ユーリという魅力的な女の子たちと「僕」との関係も見所です。
進みそうで進まないなんとも甘酸っぱい青春万歳な関係は、ラブコメとして見ても面白いです。
というか「僕」の立ち位置が羨ましすぎます。
ひと昔前のフレーズで言うと「リア充爆発しろ!」と言いたくなりますね。
とはいえ、数学としての内容は本格的です。
合同式の演算や考え方、群・環・体の議論、無限降下法の使い方など、ひとつひとつは章ごとに独立した内容でありながら、全体としてはゆるやかにフェルマーの最終定理に向かっていきます。
難易度としては高校生レベルであれば、しっかり理解できる程度でしょう。
もちろん、じっくり腰を据えて読まないといけない部分というのはありますが。
どんな人にオススメ?
フェルマーの最終定理について、数学としての証明や考え方の内容を知りたい、でも数式ばっかりの本や本格的な論文を読み込むのはちょっと……、という人にオススメです。
中学生や高校生で数学が大好きな人や、将来大学で数学をやりたいと思っている人には是非、オススメしたい本ですね。
しっかりと読み進めていけば、多少難しいところがあってもつまずいてまったくわからなくなることはないでしょう。
ですが、フェルマーの最終定理にまつわる歴史的な流れや関わった数学者たちのエピソードを知りたい、という場合はオススメしません。
この本にはそういった数学史としての内容はほとんど出てこないので、数学の読み物としての側面はないのです。
逆に数学史の話を知りたいというのであれば、サイモン・シン著『フェルマーの最終定理』がとっても読みやすく、まとまっています。
こちらの方が数学に慣れていない一般の人向けですね。
おわりに
数学史において今も語り草になっているロマンたっぷりの「フェルマーの最終定理」。
数学の難問でここまで一般の人に知られているものはないでしょう。
ですが、その数学的な魅力を詳細な部分まで知っているという人はあまりいないように感じます。
この『数学ガール/フェルマーの最終定理』を読んで、フェルマーの最終定理の魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか?