講師の視点からレビュー!!秋山仁・門間明著『秋山仁のおもしろ数学発想法~戦略編①②~』はオススメの数学本!
はじめに
小学5年生の夏、魅力的な仕掛けで数学のおもしろさを伝えるおじさんがテレビに映っていました。
長いヒゲをボウボウに生やし、白髪交じりの長髪にカラフルなバンダナを頭に巻いたおじさん。
その衝撃的な姿とともに様々な仕掛けの装置のおもしろさで、数学的な話のおもしろさを伝えていたのが秋山仁でした。
そんな秋山仁が「数学の問題を解くときに必要なことは何か?」をテーマで中学生向きに作ったのが、この『秋山仁のおもしろ数学発想法~戦略編①②~』です。
はじめに言っておきますが、この本はすでに算数・数学が得意な子にも、どうにも算数・数学が楽しいとは思えない子にも、さらにはこれから教えたいという人にもオススメできる本です。
では、オススメする理由はどこにあるんでしょうか?
理由その1:とっても読みやすい構成!!
章立ては2冊合わせて12章で、ストーリーは基本的に1章で1か月が進む構成です。
1章は本編と問題練習に分かれており、本編はマンガ、問題練習は対話形式で作られています。
マンガときくと、すぐに単純に単元ごとの解説を行うような一般的な学習マンガに思われてしまいますが、まったく違う内容のものです。
そもそも秋山仁は特徴的な風貌もさることながら、そのわかりやすい講義で有名な予備校講師でした。
大学受験用の参考書についても、絶版後もその参考書のコピーが学生の間で配布されて継承されるという伝説まで生み出すほどの、わかりやすさや画期的な内容となっていました。*1
そしてそれを支える考え方が「発想法」という、問題の糸口を見つけるための方法でした。
つまり、どんなに高度なことを習ったとしても、それを使うための糸口が見つからなければ意味がないし、数学ができなくて悩む原因は、その糸口を見つける方法を知らないからだという考え方です。
その発想法を高校受験に必要な12コに絞って、本編のマンガと対話形式の問題練習で学習することになります。
理由その2:中身がおもしろい!!
学習マンガと言われているものの欠点は、おもしろいものが少ないということです。
マンガだから読むというのはきっかけにしかなりません。
内容がおもしろくなものは、結局読まなくなるためムダでしかないのです。
その点、この本はとてもおもしろい!
4人の数学嫌いの中学三年生が、数学仙人仁仁こと秋山仁とともに、楽しい実験や日常生活のあらゆることから数学の発想法を学んでいくドタバタコメディです。
部屋のかたずけやジグソーパズルから「場合分け」を学んだり、ハイキングから「対称性」を理解するなど、各章の内容は魅力的なものばかりです。
内容がおもしろいだけでなく、それを数学の発想法へとつなげていく方法は素晴らしく、読むだけで理解することができますし、筆記用具なしですぐに身につく。
本編に続く問題練習は、実際に高校受験で出題された問題を生徒4人が協力して解く内容になっています。
本編の発想法を実際に問題で試すという感じです。
最初のうちは手が出なくても、4人の対話を読みながら少しづつ考え方が引き出されていきます。
はじめは「こんな偏差値の高い学校の問題なんか解けるわけないじゃん」と思ってしまいますが、発想法を使って試行錯誤しながら解いていくのは気持ちがいいですね。
その際、知らなければいけない公式や考え方については欄外でも解説があるので、公式に不安があっても大丈夫です。
理由その3:発想法を学ぶ手法は再現性が高い
得てしてこういう実験的な内容の本は、中身がおもしろくても再現できない内容が多いものです。
ですが、この本に書かれているものは多くのものが日常で使われているような道具で再現できます。
たとえば、立体の切り口や切ったときにどんな立体になるのか、といったものは、僕自身、豆腐やジャガイモでやりました。
実際に作ってこの本のようになって、ちょっと感動しましたね。
他にもキャンプに行く計画を立てたり、予算内で食材をそろえる方法など、日常生活にも直結することが発想法として現れます。
単に数学の勉強となるだけでなく、生活と数学的思考とが結び付いているので、納得させられることも多いです。
そういった点で、大人でも読んでいて発見のある本です。
おわりに
さて、いかがだったでしょうか?
発行された年はずいぶん古いですが、今でも十分に通用する数学の参考書の名著です。
公式とかは覚えているが成績が上がらない、数学の解き方がよくわからないといったことで悩んでいるのなら、是非とも読んでもらいたい本ですね。
とはいえ、これほどの名著であっても、現在は一般の書店では大きい店舗でもほとんど目にすることはありません。とてももったいないことです。
なので、以下のリンクなどからネットで購入するのがいいですよ!
*1:現在は森北出版から、発想法シリーズとして再出版されています