講師の視点からレビュー!大上丈彦著『ワナにはまらない微分積分』はオススメできる数学本か?
はじめに
3年ほど前に書店の数学コーナーを見ていたときに目に留まって、気になった本です。
僕は文系しかない大学の法学部出身者なので、数ⅡBまでしか教わったことがありません。
塾で数Ⅲを教えることになった際、独学で微分・積分を習得するための本を探していた時に出会いました。
僕は昔から、参考書などでかわいいイラストであったり、マンガが描かれているようなものは信用しないようにしていました。
ですが、表紙を見てなんとなく気になり、買ってみたわけです。
改めて、この本が数学を学習するときに役立つかをレビューします。
どういう本なの?
高校数学の集大成とされる微分積分とそこに至るための極限の解説を中心とした本です。
表紙を見ればわかりますが、高校数学で学習する順番とは異なり、積分→微分→極限の順に進んでいく、他の教科書とは一線を画す内容です。
実は2000年に出版された『むずかしい微分積分』という本の再販ですが、内容は大幅に加筆修正されているそうです。
本の中身は?
まず、かわいいイラストに騙されてはいけません!!
いい意味で僕を裏切ってくれました。
しっかりとした数学書です。
ただし、語り口はとてもなめらかで、まさに予備校で講義を聴いているような文章です。
筆者が書いている通り、単に易しいのではなく、読者に優しい本になっています。
ところどころに出てくるグラフは、手書きのあたたかい印象。
ポイントになる部分やわかりにくいと思われる部分には、森皆ねじ子さんのかわいらしいマンガでわかりやすく説明がされています。
「わんぽいんと」や「ちょっとひといき」といったコラム的な部分では、つまずきやすい部分の原因などが解説されています。
理解しにくい区分求積法の意味合いや、なぜどのようにしてその数式が作られたのか、といった学校や普通のテキストでは曖昧にされがちなところもわかりやすく説明がされています。
かゆいところに手が届く、というイメージですね。
ちなみに高校数学再入門となっていますが、大学のはじめまでの内容が含まれています。
一方で、練習問題のようなまとまった演習はありません。
あくまでも極限、微分、積分を理論的に理解していくためのものですね。
問題演習をバシバシやる、という内容ではありません。
オススメの本?
オススメの本です。是非読んでもらいたいですね。
実を言うと理系に進もうと考えているやる気のある生徒には、必ず進めていました。
学校・塾の授業で微分積分を習う前に読んでおくと、授業の内容がスッキリと頭の中に入ってくるのではないかと思います。
また、単に道具として使われる微分・積分だけではなく、その背景や歴史といった部分まで触れられるので数学の多方面のおもしろさがありますね。
普通のテキストなんかでは絶対に味わえないおもしろさがあるのです。
ただ、先にも述べたように練習問題は豊富とは言えません。
道具として使えるようになるためには、しっかりとした問題集が必要でしょう。
微分積分を通しておもしろい話を聴くというスタンスで臨めば、すでに数学をマスターしている人にとっても読んでみていい本だと思います。
是非、みなさんも一度手に取って読んでみてはいかがでしょう?
ちなみに同じような数学の鬼門・ベクトルについても、シリーズとして出版されています。
こちらも、オススメの参考書です!!