ぼくでんのプラプラ計画!!

30代の元塾講師で日本語教師がプラプラと考えたことを、マーライオンのごとく吐き出すブログ

数学の講師の視点からレビュー!『数学ガール』は本当にオススメできる数学本なのか?

はじめに

結城浩著の「数学ガールシリーズ」第6作目、『数学ガール/ポアンカレ予想』が4月14日に発売されました。

これまで、「数学ガールシリーズ」はずーっと気になっていたのですが、なんとなく敬遠してました。

今回は僕のブログ開設と最新刊の発売を記念して(?)今更ながら第1作目の『数学ガール』を読んだ感想を書いていきます。

どんな作品?

そもそも『数学ガール』ってどんな作品なんでしょう?

数学ガール』は結城浩が2002年からweb上で公開していた小説をもとに企画・出版された数学を題材にした小説です。

シリーズは累計40万部を売り上げるベストセラー。

2014年には日本数学会出版賞も受賞しています。

高校生の「僕」が知的でクールなミルカさん、元気いっぱい小動物系のテトラちゃんの2人の女の子と数学の問題を解きながら、数学の世界を旅していくという内容。

「僕」と2人の女子高生との微妙な関係を描いた甘いラブコメ的な部分と、骨太の本格的な数学をテーマにした部分とを兼ね備えた珍しいタイプの小説です。

で、おもしろいの?

単刀直入に結論だけを言えば、おもしろいです。

結城浩のwebサイト上にある「≪理系にとって最強の萌え≫をあなたに」というキャッチフレーズはまさにそのとおりです。

テトラちゃんのわかりやすい好きオーラに鈍感な「僕」の様子であったり、ミルカさんのツンデレっぷりは、甘酸っぱい青春の香りです。

とはいえ、どんでん返しや何か衝撃的な事件が起こるわけではないので、昨今の恋愛ものに慣れた消費者にとっては、ちょっと物足りなさを感じるかもしれないですね。

数学的な部分に関しても、「僕」たちの会話のやり取りをベースにしているので、つまずきやすいところはある程度わかりやすく、ていねいに作られている印象です。

本格的な数学を大学であまり勉強したことがないという人にとっては、いいレベル感なのではないでしょうか。

それに扱っているテーマも、最初はバラバラに見えていても、少しずつ1つの方向に収束していく様子は、構成として素晴らしいところでしたね。

じゃあ、オススメってことだよね?

正直、誰にでもオススメできる作品ではありません。

高校生が主人公のラブコメ風の小説ではあるものの、扱われている数学は高校~大学の数学です。

しかも、テーマとして出てきた直後では、それがどのように計算できるのかやどのような意味合いを持つのか、といった部分は触れられないこともあります。

そのため、ある程度の数学的な理解をすでにしているか、本質的な数学の勉強の仕方をある程度は身につけていないと読み進められないのです。

そういった点では、数学嫌いの人やバリバリの文系で数学が苦手な人に対して、勧めることはできません。

逆にオススメできるのは、理系や数学科に進もうとしてる人、大学では数学を勉強しなかったけれども、改めて数学を勉強してみたいという人。

相当に数学に興味を持っている人にはオススメできます。

また、数学を教えること、数学を勉強することとはどういうことなのかを的確に伝えている本でもあり、数学を教えたいと思っている人にもオススメできます。

おわりに

数学ガール』は非常にいい作品だと思います。

数学的な内容はしっかりとわかるように書かれているし、数学という学問としての入口としてまずこの本を手に取るというのは、1つの選択肢になるでしょう。

数学を勉強したい、でも専門書はちょっと難しすぎると思ったら読んでみるといいでしょうね。